コウエン・ノイエ / Park like house

北海道江別市。市街化区域の縁に置かれた黒い木箱。敷地の北東に小さな公園、北西には大きな畑が広がる牧歌的風景を望むことができる。クライアントは小さな娘さんを持つご夫婦で、「近隣の眺望、光の変化を楽しめること」、「家族の居場所がたくさんあり、それぞれが繋がりを感じられること」、「子供が楽しめる空間構成であること」が主な要望であった。これらの条件を満たすべく設計を始めた際、敷地に隣接する公園で遊ぶ子供たちの姿を思い出した。この公園には遊具らしい遊具などほとんど無いのだが、子供達は茂みや築山を巧みに使い、または避けながら、かけっこやボール遊びを楽しんでいる。樹木の影、茂みの配置、芝生の長短、勾配の変化などが小さな公園の中に多様な場所をつくりだし、子供達はごく自然にそれを感じ取っている。この公園のような緩やかな場のつくりかたを住宅に持ち込むことで、クライアントの要望を満たす提案ができるのではないかと考えた。
その結果出来上がった建物は、日当たりと眺望を確保しやすい2階に家族が集まれる大きめのスペースを中心に、建物全体に散りばめられた複数の小さな居場所が、いくつかの小さな吹抜け・壁に穿たれた室内開口などによって緩やかに繋がるワンルーム的住宅である。

開口から染み出し、吹抜けを降り、入組んだ小さな居場所に充溢するのは、光、風、音、香り、風景そして家族の気配である。

撮影:酒井広司  Photo: Koji Sakai