モリ・ノイエ

札幌市に隣接する北広島市に建つ小住宅である。建物は住宅街のエッジに位置し、前面道路は未舗装で通過交通もほとんどない。敷地は岬のような形状をして調整区域の森にくい込んでいるから、大きな木がある92坪の敷地はほとんど周囲の森と一体化して見える。

毎日眺める森。可能な限り大きな開口をとって外部に居る時と同じように漠然と木々を眺めるのではなく、限られた開口から森を眺めることで一本一本の木それぞれと深い関係を持つことができるのではないかと考えた。自分が建物内のどこに居るかによって同じスリット窓からでも見える木が変化する「選ばれた樹木」との親密な関係。赤い実のなる木、美しい葉形を持つ木…それらの木が森の中のどこに位置するかに影響されて『それを見る場所』が建物内部に生まれる。住宅の真ん中にはガラスの風除室が立ち上がって天窓からの光とともに虚像の森がぼんやりと現れる。これら性格の違う光や影、虚・実の風景などが相互に作用しできる、森の中のような心地よい複雑さによって、内外の新しい関係性がつくりだせないかと考えた。

フォルムは北広島の気候や周辺環境から素直に導き出されたものである。フラット屋根での積雪凍結融解による諸問題の回避、屋根からの落雪を堆積できる敷地面積、除雪作業面積の軽減、台形敷地における壁面後退距離の指定などがこの建物形態を決定付けている。

撮影:酒井広司  Photo: Koji Sakai