Silver screen house

ギンマク・ノイエ

札幌の市街地を走り抜けるJR函館本線に面した住宅。京都をモデルに開拓された札幌は、市街地の殆どが条里制(いわゆる碁盤の目状の街並み)を基本としているが、この住宅が建つエリアは都心部から伸びた条理区画とは大きく角度が異なっている。このため、市内中心部と郊外を結ぶ線路・幹線道路と、このエリアの街区が接する部分には、札幌では見かけることの少ない、奇妙な角度を持つ交差点が出現することになる。

この住宅はその奇妙な角度感をそのままプランに落とし込んでいる。敷地だけを見れば、長方形の土地に2本の道路が接する「角地」というオーソドックスな条件だが、そこに目の前を走る鉄道と平行な、敷地を通り抜ける車路兼アプローチを用意した。

住宅はそのアプローチに沿って建ちあがり、住宅の前後に三角形をした大小の庭が残される。鉄道に面し、交通量の多い交差点でもあるこの敷地の騒音や、外部からの視線などを考慮し、庭は住宅と一体化した高い外皮によって囲われる。

一見閉鎖的な外観ではあるが、その銀色をした波板の幕は空の色、あるいは庭に植えられた木々の彩りを捕らえ、増幅させ、2つの庭から様々な光を室内に届けることになる。また、三角形の庭は家族の移動に伴い奥行き感の違う外部を感じさせることにも寄与し、光と共に、シンプルな室内に変化に富んだ複雑な場を出現させるだろう。

当然この銀の壁は外部にも同様の現象を引き起こし、通勤列車からはそのスピードも相まって、季節や時間によって表情豊かに変化する「銀幕」を、毎日楽しむことが出来るだろう。


撮影:酒井広司  koji sakai