SNOWSCAPE MOERE IV  collaboration with Nina Fischer & Maroan el Sani

札幌市にあるモエレ沼公園(彫刻家イサム・ノグチ設計)を会場に、国内外の様々なアーティストが参加して開催されてきた冬のアートイベント「スノースケープ モエレ(SSM)」。4回目の開催となる2009年冬、アカサカシンイチロウアトリエもこのイベントにはじめて参加することになった。

「スノースケープ」=雪の風景とはどういうものか?という問いに対する我々の答えは「雪そのもの」ではなく「雪ではない」なにかの存在により雪の美しさは増幅されるというものであった。青空と雪山のコントラスト、雪原に佇む老木、雪に刻印された動物達の足跡…雪以外の何かが確実に「スノースケープ」をより魅力的にしている。

SSMにおいて我々は「雪ではない」なにかとして公園のランドマークであるガラスのピラミッドに呼応したカラフルなピラミッド型テントを提案した。真っ白な雪原に散りばめられた様々なサイズ、色を持つピラミッドは、そのコントラストによって雪の白さ、雪の性質をより際立たせる「テントビレッジ」を構成する。ピラミッドの下には雪原を掘り込んだ雪室があり、外観からは想像できない大きな空間がテント色に染まり、訪れる人を迎え入れる。

また、我々は「光が透過する」テント素材の特徴を活かす為に、夕暮れから夜にかけてピラミッドテントに映像を照射することを提案した。ドイツの映像アーティストNina Fischer & Maroan el Saniはこの企画に快く賛同してくれ、彼らのすばらしい映像作品とテントビレッジのコラボレーション実現のために様々なアイディアを提供してくれた。

現実の作業では、例年にない少雪に加え、5月並みの暖気と大雨、その後の寒波などに悩まされ、計画の縮小や変更を余儀なくされた。しかし一方でそうした「雪」や「寒さ」といった美しくも過酷な自然現象が人々を強く結びつけることを実感できたのは収穫だった。気候に連動したライブ的作業によって現場に関わる人々の間にただならぬ一体感が生まれたし、会期中ここを訪れてくれた多くの市民や観光客は、雪や寒さをネタに小さなビレッジを行き交う見知らぬ人々と会話を弾ませてくれた。

空調された室内展示からは決して生まれてこないであろう人々の行動、表情、そしてコミュニケーション。雪と関わる作品制作を通じ、こうしたスノースケープ・モエレの本当の目的に気付かせてもらったことに感謝したい。

撮影:小牧 寿里  Photo: Yoshisato Komaki